<「その地域」の判定の実務>

「その地域」を感覚的にみたら、
次は具体的かつ理論的に判断していきます。

国税庁のHPの内容の解説はここからになります。

まず物理的な要素、
つまり目や地図で見てわかるものを判断基準にします。

具体的には川、山、鉄道、国道や県道などの広い公道です。

このようなものは地域を分断することが多いので要チェックです。

「この川渡ると別の地域だな」とか
「この鉄道は踏切が少なくて行き来しづらいから地域は分断されてるよね」とか
「この道路は広くて歩道橋でしか渡れないからあまり行き来しないよね」など、

このような物理的なものの区切りで地域のまとまりが
できているのがわかると思います。

そうするとその物理的なものを境に地域をまとめることができます。


さらに目に見えない要素、
つまり都市計画法上の用途地域、容積率を判断基準にします。

これは役所HPや役所窓口で販売されている
「都市計画図」で調べればわかります。

この時有力な判断基準になるのが容積率です。

容積率100%と80%はほぼ同じ地域の枠組みといえますが、
100%と400%は明らかに異なる地域といえます。

80%・100%は低層の住居、
400%は中高層の建物が建ち並ぶイメージです。(地価水準も違います)


また住宅地域の中の対象地の近くにブックオフ等の店舗があっても、
それが店舗の建ち並ぶ広い通り沿いにあれば、
その通り沿いの地域は住宅地域とは言えないので別の地域と考えます。

前述の感覚的な判断も併せ、
上記の手順で見ていくと、右図のように「その地域」が判断できます。

そうするとこの範囲で戸建やマンション分譲の事例を収集し、
地域分析すればよいことになります。


<「その地域」の感覚的な判断>

 評価対象地が分割されて戸建分譲されたとしたら、
その戸建を買おうと検討する人は、
どこの範囲(地域)まで比較検討するだろうか、と考えてみてください。

みなさんご自身が買うつもりになって考えるといいでしょう。

そうすると、「ここを買う人はここも買おうと検討するよね」とか、

「ここを買う人はここまで駅から遠いと買わないよな」とか、

なんとなくわかるはずです。
駅や公園、スーパーまでの距離や小学校の学区などが基準になったりするはずです。

なんとなくでいいので、まずはこの感覚で判断してみます。



広大地評価における「その地域」とは?

広大地に該当するかの診断結果を報告すると、
「そんなに広い範囲で比較、分析するんですね」という声をよく頂きます。

多くの方が対象地のごく近くでしか判断していないようです。

今回は「その地域の標準的な宅地面積に比して著しく大きいかどうか」の
「その地域」をどのように判断したらいいかについて解説します。


「その地域」については、
国税庁のホームページに質疑応答があり、
一応の見解が示されています。

以下がそれです。

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【照会要旨】
 広大地の評価において、
「その地域における標準的な宅地の地積に比して・・・」と
定めている「その地域」とは、具体的にどの範囲をいうのでしょうか。

 【回答要旨】
 広大地とは、「その地域における標準的な宅地の地積に比して
著しく地積が広大な宅地で開発行為を行うとした場合に
公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの」をいいます。

  この場合の「その地域」とは、原則として、

 ・評価対象地周辺の河川や山などの自然的状況

 ・土地の利用状況の連続性や地域の一体性を
分断する道路、鉄道及び公園などの状況

 ・行政区域、都市計画法による土地利用の規制等の公法上の規制など、
土地利用上の利便性や利用形態に影響を及ぼすもの


などを総合勘案し、利用状況、環境等が概ね同一と認められる、
住宅、商業、工業など特定の用途に供されることを
中心としたひとまとまりの地域を指すものをいいます。

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毎度のことながら抽象的なので、
これを読んだだけでは今一つピンときませんね。

ですので、次の記事で私が実務でどのように
「その地域」を判定しているかを解説します。


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  ② 近隣の標準的な宅地面積に比して著しく大きいか
  ③ マンション適地か、戸建分譲素地かの見極め方
  ④ 開発道路が必要か、旗竿敷地で区画割り可能か 
  ⑤ 開発許可の基準面積未満の土地は適用可?
  ⑥ 建物が建っている敷地での適用は可能か
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まず、対象地周辺の土地の大きさを住宅地図上でチェックしてください。

そして対象地がその地域の標準的な画地面積に比して著しく大きいかどうかを判断するには、

その地域の標準的な画地面積が何㎡なのかを見極める必要があります。

その地域の標準的な画地面積は、その地域で戸建て分譲される際の面積帯がひとつの目安となります。

さらに各市町村の開発指導要綱や条例等で、

戸建て分譲で区画割りする際の「最低敷地面積」も目安となります。

また、公示地の面積も参考になる場合もあります。

対象地周辺の地価公示の標準地(都道府県地価調査の基準地でも可)の面積と対象地の面積を比較して大小を検討します。

ただし地価公示の標準地として設定された当時の標準的な面積であることに注意してください。

時代とともにその地域の標準的な画地の面積は変わりますから、

相続時点現在の標準的な面積を、市場分析を行ってきっちり見極める必要があります。

まずは対象地が開発基準面積より大きいかを数値で確認します。

「その地域の標準的な宅地面積に比して著しく大きいといえるかどうか」については、

16年情報、17年情報でひとつの指標となる数値が示されました。

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原則として、次に掲げる面積以上の宅地については、

面積基準の要件を満たすものとする。

①市街化区域、非線引き都市計画区域

市街化区域

三大都市圏 ・・・・・・・ 500㎡

それ以外 ・・・・・・・ 1,000㎡

非線引き都市計画区域 ・・・・・・・ 3,000㎡

②用途地域が定められている非線引き都市計画区域

・・・・・・・ 市街化区域に準じた面積

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ただし、この開発許可基準面積は、ひとつの目安であって絶対条件ではありません。


500㎡未満、1,000㎡未満、3,000㎡未満でも広大地に該当するケースが

多々ありますので数値だけで判断しないようにしましょう。



広大地に該当するという根拠を何も示さずに、広大地評価にて申告するときは注意が必要です。

明らかに誰が見ても


「ああ、これは広大地だね」


という土地なら何の根拠の示さずに申告してもよいでしょうが、

「500㎡の角地」

「駅徒歩3分の容積率200%の1,500㎡の土地」


など、明らかに広大地とはいえないような微妙な土地で、
広大地評価するときは細心の注意が必要です。


広大地に該当するという根拠資料を添付していないと、税務署は否認前提で調査に入ります。

そして例えば、区画割り想定図を添付せずに申告した場合で、

「区画割り想定図を出してください」と言われたときは、

「じゃあ図面だけ出せばいいのね」と、図面だけを出すのは大間違いです!

区画割りの図面を出せと言ってきているということは、裏を返せば


「路地状敷地で分割できるでしょ」


「つぶれ地は生じないでしょ」


と言ってきているということです。

ですから、この場合の対処は、

図面を出すのはもちろんのこと、標準画地面積を○○㎡のと判断した根拠や、

周辺地域の分譲事例、開発事例、つぶれ地が生じるという事例、

位置指定道路を造っての分譲事例など、

ありとあらゆる客観的資料をこれでもか、というくらい添付した「意見書」を出すべきです。

そうしないと、中途半端な対応をその都度繰り返していては、後手後手になってしまい、

税務署に付け入るすきをますます与え、最終的には完全否認で終わってしまいます。


担当官の調査時の質問の意図を読み、適切に対処することが重要です。


10/20「相続税土地評価・調査の実務手順セミナー」を開催しました。


予想以上に多くの税理士先生に受講頂きました。


当初は定員12名程度でこじんまりと開催する予定でしたが、

なんと22名もの参加申し込みを頂き、急遽、広い会場に変更して開催しました。


受講頂きました先生方、誠にありがとうございました。


知らないうちに高く評価しているかもしれない事例など、

できる限り多くの事例を紹介したつもりですが、本来4時間くらいかけてやるセミナーを2時間半に凝縮してやったので、なかなかついてくるのか大変だったかな、という感じでした。


次回は「間違いやすい土地評価事例30連発」(仮)のような、

実例を多くとりあげるようなセミナーを開催しようかと思っています。


広大地評価での申告にあたっての留意点

ご存じのように広大地評価は財産評価基本通達24-4に規定されているもので、
この規定に該当すれば土地評価額の減額幅が大きく、
節税効果も非常に高くなっています。
(例えば2,000㎡の土地は路線価が半額になります)

 計算方法も非常に簡単で、評価明細書の第2表の一番上の一行で済みます。

 しかし、この計算結果を示すだけでは広大地に該当することを証明したことにはなりません。
そして広大地に該当するかどうかは、その要件を満たすかどうかが最大のポイントになります。
税務署も広大地に該当する要件をすべて満たしているかどうかをチェックします。

そして要件をひとつでも満たしていないと広大地評価は否認されることになります。

 この広大地に該当するかどうかは不動産関連法規や市場分析手法を熟知していなければできないものであり、
この広大地判定業務は税理士業務の範疇を越えていると言えます。


・公共公益的施設用地の負担が必要かどうか  
・標準的な宅地と比べて著しく大きいか  
・マンション適地ではないか
・既に開発を了しているか、現に宅地として有効利用されている建物の敷地に該当するか
・評価単位の分け方に誤りはないか


 これら税務署側の厳しいチェックをクリアするために、
書面を添付し広大地の要件を満たすということを証明する必要があります。
 
 そこで当事務所は

相続人の方の節税

及び

税理士先生の申告時の負担軽減と安心

のために
「広大地判定に関する意見書」を発行しております。

「広大地判定に関する意見書」は不動産の専門家として、
広大地の要件を満たすことを示した文書です。
もちろん、この意見書を添付すれば必ず広大地評価が認められるというものではありません。
しかしこれを申告時に添付することで広大地評価として認めれられる可能性は高くなるのも事実です。


 申告後の対応ですが、広大地評価を否認するとの通知があった場合は、当事務所から文書での反論回答、状況に応じて税務署に同行しての反論説明等を行い、広大地評価が認められるよう最大限支援致します。
 

 申告にあたっては事前にしっかりと相続人の方及び税理士先生、
当事務所の全員が広大地評価での申告の長所と短所を共有する必要がありますので、
広大地評価についての方針を一度全員で話し合うことをお勧め致します。
そして「広大地判定に関する意見書」の発行費用に対する節税額の大きさをご確認いただき、
申告時に添付することをご検討ください。

「16年情報」とは?

「16年情報」とは、

「平成16年6月29日付資産評価企画官情報第2号:財産評価基本通達の一部改正について」

のことです。

平成16年に広大地評価が改正されたときの解説集です。

これにはこんなことが書かれています。

・従来の規定を改正した趣旨が述べられている


・広大地に該当する条件の例示:開発許可基準面積以上の土地→例示!


・広大地に該当しない条件の例示:
  
 容積率300%以上の地域の土地(→マンション適地だから)、
 
 既にマンション、ビル、大規模店舗、ファミリーレストランの敷地となっている土地
(→マンション適地、ビル用地、店舗用地だから)

 間口が広く奥行が短い土地(→公共公益的施設用地の負担が生じないから)


・マンション適地の判定について、容積率200%の土地などは専門家の意見を聞きなさい、明らかにマンション適地と言えないなら広大地評価してよい。


・広大な市街地農地、広大な市街地山林、広大な市街地原野にも適用あり

→ただし宅地比準方式の方が低くなれば宅地比準を採用


・重複適用項目について


要約すると上記のようなことが書かれています。